エコシステムの繁栄を約束する21世紀最強のプラットフォームビジネスモデルをデザインする

買い手よし、売り手よし、世間よし(近江商人の教え) 


【対象とする皆様】

  • スタートアップとしてプラットフォームビジネス(シェアリングエコノミー含む)を企画/検討している方々
  • 新規事業としてプラットフォームビジネスの企画/検討をしている既存企業内の方々
  • デジタルトランスファメーションを推進する中で、既存事業内にプラットフォームビジネスの組込みを企画/検討している方々 

デジタルテクノロジーを活用したプラットフォームは、現代において経済的、社会的に最も重要な発展を遂げてきた最強のビジネスモデルとして注目されています。実際、世界の時価総額トップ10企業(令和元年8月末)のうち、8社が何らかのプラットフォームを運営しています(マイクロソフト、アップル、アマゾン、アルファベット、フェイスブック、アリババ、テンセント、ビザ)。プラットフォームとは、「特定のビジネスエコシステム内で、様々なプレイヤーによる価値交換を円滑化するために、デジタルを活用した仮想空間としての取引の場を提供するビジネスモデル」として定義することができます。 

台頭するビジネスエコシステム

エコシステムとは生態学(例.海洋のエコシステム)で使われていた概念であり、ビジネスエコシステムとは「協働と競争の双方を通じて、価値の生成と消費を行う多様なエンティティから構成される動的かつ共進化するコミュニティ」を意味します。エンティティとは、エコシステム内で特定の役割をもつプレイやーやアクター(例.生産者や消費者)です。

 

コンサルティングファームのマッキンゼーは、2025年までに12の大きな分類(例.移動、住居、教育、健康)からなるビジネスエコシステムの台頭を予想しています。注1)この予想によれば、売上ベースで全体として約60兆ドル(約6,600兆円)という巨大な市場であり、これは2025年における世界GDP予想の3分の1を占めることになります。

 

注目を浴びているMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)は、移動に関するエコシステム内において移動に関するプラットフォームを運営する事業体(単独企業または企業連合)が提供しようとしているサービスを意味します(図1)。

MaaS(移動)のエコシステム

(図1)MaaS(移動)のエコシステム

存続と繁栄のための健全なエコシステムは、生産性(各々のエンティティの生産性が、新しいテクノロジーを活用することで向上すること)、堅牢性(各々のエンティティの倒産や廃業の率が少なく、末永く生存すること)、多様性(ニッチなエンティティが台頭し、多様なプロダクトやサービスが生まれてくること)という3つの要件を満たす必要があります。

 

プラットフォーム所有者(プラットフォーマー、ネットワーク指揮者と呼ばれることもあります)は、これら3つの要件を促進する価値を各々のエンティティに提供することで、選択したエコシステムの存続と繁栄を約束しなければなりません(図2)。 

エコシステムを活性化するプラットフォーム

(図2)エコシステムを活性化するプラットフォーム

プラットフォームの2つのタイプと4つの基本的なアクション

プラットフォームはその目的や本質によって、交換型プラットフォーム(地球上に存在するヒト、モノ、カネ、チエというリソースの交換を容易にすることを目的とするもの)と制作型プラットフォーム(物理的なプロダクト、ソフトウェア、動画や記事のようなコンテンツの制作とその消費を容易にすることを目的とするもの)というタイプに大別されます。

 

どちらの場合においても、プラットフォームを経由したエンティティの間の中核的な取引/交流は、生産者による価値の生成(例.動画のアップロード)、プラットフォーム上での生産者と消費者の結び付き(例.フィルターを通じたマッチング)、消費者による価値の消費(例.視聴)、消費者による対価の支払い(例.金銭または「いいね!」)という4つの基本的なアクションから構成されます(図3)。 

中核となる取引/交流に関する4つの基本的なアクション

(図3)中核となる取引/交流に関する4つの基本的なアクション

プラットフォームビジネスモデルのデザインに関する4つのステージ

従来のデザイン思考のアプローチが、対象とする顧客や利用者の課題を解決するプロダクトやサービスのデザインであるとすれば、プラットフォームのデザインは、エコシステム内のエンティティ間の関係性をデザインすることに焦点を当てるものです。プラットフォームビジネスモデルのデザインは、「事業機会の探索」「プラットフォーム戦略デザイン」「市場におけるテストと検証」「成長戦略の策定と実行」という4つのステージから構成されます(図4)。注2) 

プラットフォームデザインに関する4つのステージ

(図4)プラットフォームデザインに関する4つのステージ

事業機会の探索

このステージの大きな目的は、ターゲットとすべき適切なエコシステムを選択し、その中から事業機会を見つけ出すことです。例えば、既存事業内に対するプラットフォームビジネスの組込みを企画/検討している組織にとって、イノベーションプロセスでご説明したターゲット顧客の普遍的なジョブステップを最初に描くことが役立ちます。

 

アップルの場合、iPod(プロダクト)とiTunes(プラットフォーム)を組み合わせることによって、ターゲット顧客(音楽を楽しみたい)の幅広いニーズをカバーすることに成功しました(図5)。これは、現在の中核となるプロダクトやサービスを自社で提供し、その補完財をプラットフォーム経由で提供しようとするアプローチです。住宅ローンと不動産、ゴルフクラブとゴルフ場、食品と調理具、ハードウェアとソフトウェアなど、世の中には多くの補完財が存在します。このアプローチが上手くいけば、プロダクトがプラットフォーム参加者を増やし、プラットフォームがプロダクト購買者を増やすという好循環が生まれます。 

プロダクトとプラットフォームの組合せ

(図5)プロダクトとプラットフォームの組合せ

プラットフォーム戦略デザイン

このステージの大きな目的は、選択したエコシステム内におけるエンティティ間の価値交換を活性化するための基本的な戦略をデザインすることです。プラットフォーム戦略デザインは最も重要なステージであるため、この後で説明していきます。

 

市場におけるテストと検証

このステージの大きな目的は、デザインしたプラットフォーム戦略の中で、最もリスクの高い仮説や前提をテスト/検証することです。そのために、最小実用プラットフォームというアプローチ(リーンスタートアップでいう最小実用プロダクトの応用)を採用してきます。

 

成長戦略の策定と実行

このステージの大きな目的は、プラットフォームをスケールアップしていくための戦略を策定し(例.クリティカルマスの獲得ガバナンスモデルの構築収益モデルの確立取引/交流とサイド拡大)、それを実行することです。

プラットフォーム戦略デザインに関する8つのステップ

プラットフォーム戦略デザインのステージは、8つのステップから構成されます。8つのステップはさらに、エコシステムにおける洞察の獲得、取引/交流エンジンと学習/成長エンジンを中核としたエンティティ間の関係性のデザインに大別されます(図6)。

 

エコシステムのマッピング

選択したエコシステム内に存在する全てのエンティティ(例.生産者、消費者、パートナー、外部の利害関係者)をマッピングしていきます。

 

エンティティのペルソナ描写

各々のエンティティに関する首尾一貫した人物、チーム、組織の全体像を理解していきます。

 

交換価値の潜在性分析

エンティティ間で現在交換されている、または将来交換される対象を分析していきます。

 

焦点を当てる関係性の選択

関係性のデザイン対象として最初に焦点を当てるエンティティのペア(例.1セットの生産者と消費者)を選択していきます。

プラットフォーム戦略デザインに関する8つのステップ

(図6)プラットフォーム戦略デザインに関する8つのステップ

取引/交流エンジンのデザイン

プラットフォームに参加することによって、エンティティ同士の取引コスト(金銭、労力、時間)を低減する仕組みをデザインしていきます。

 

学習/成長エンジンのデザイン

プラットフォームに参加することによって、各々のエンティティが進化するプロセスをデザインしていきます(例.アップル、エアービーネヌビー、ユーチューブは、各々アプリ開発者、体験ホスト、ユーチューバ―といった独立して生計を立てる多くの雇用を創出)。

 

取引/交流エンジンと学習/成長エンジンは、プラットフォームの価値提案のベースを形成するだけでなく、各々のエンティティに対するプラットフォーム参加への動機付けとなるものです(図7)。

取引/交流エンジンと学習/成長エンジン

(図7)取引/交流エンジンと学習/成長エンジン

プラットフォーム経験の組み立て

上記の2つのエンジンと外部API(例.グーグルマップ、決済プロバイダー)のコンポーネントをレゴのブロックのように組合せ、各々のエンティティがプラットフォームの内外で経験する一連のプロセス、プラットフォーム経験ジャーニーを描いていきます(図8)。

 

プラットフォームキャンバスの生成

これまでの成果物に対して、不足しているビジネスモデルの要素を加えていきます

プラットフォーム経験ジャーニー

(図8)プラットフォーム経験ジャーニー

注1)同社のレポート「Winning in Digital Ecosystems」による。

注2)イタリアのBoundaryless Srlによってリリースされプラットフォームデザインに関するオープンソースのツールキットを参照。 


【参考リンク】

プラットフォームビジネスモデル入門&実践(メディア記事)


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